あの後、僕は先生の顔をまともに見れなかった。
きっと口数も減っていただろう。
…
……
「和也君のことが好きだから」……って、これってあれだよな!
告白ってやつだよな!
寝転びながら携帯を上に投げて一人キャッチボールをしてみる。
すき、好き、スキ、、、
好きかぁーー!はは、ははははは!!
ドン!!
勢い余って、思わず天井にぶつけてしまった。
…
……
待てよ、好きって何だ?
もしかしてあれ?ライクとラブのライクってやつなんじゃ……
…
……いやいや、ラブだよ!ラブ!!
…
……でも、「好き」とは言われたけど、「付き合って」とか「恋人になって」とか
そういった言葉は一度も出てこなかったな。
…
……
………
あーーーー、もう!!!
落ち着かなくて頭をかきむしる。
明日もっと詳しく……
ピリリリリリ、ピリリリリリッ
携帯が鳴る。
「誰だ?」
同じクラスで友達の慎吾からだ。
ピッ
「もしもし」
「あっ、和也?」
当たり前だろ!今さら携帯なのに本人確認するなよ、まったく。
こっちは他の事で頭がいっぱいだっていうのに。
「何?」
「あのさ、明日暇か?」
「暇じゃない、家庭教師があるんだ」
「それって、夕方からだろ。昼間でいいんだ」
「…何するの?」
「いや、一緒に図書館行って勉強しようかと」
図書館で勉強か……夏休みだし混んでそうだな…
「うーん……」
渋った態度を取る。
「ふふふ、来ないとお前は絶対後悔するぞ!」
「何で?」
「ふふふ、それは言えない」
「何だよ!気になるだろ!!」
「じゃあ、明日10時にいつもの場所な!じゃあ!」
「って、おい!」
プー、プー
……切りやがった。
まあいいか、明日、慎吾にでも話しを聞いてもらおう。
部屋で一人で悩んでいるとパンクしそうだ。


ったく、おせーなー慎吾のやつ!
もう10時過ぎてるじゃないか!!
こっちは勉強やら……何やらで寝不足なのに
ちゃんと10時……5分に来たってのに。
待ち合わせ場所のコンビニで勉強用具の入った重い鞄を背負って
雑誌をぺらぺらと立ち読みして待っていた。
「よっ!」
遅れてやってきた慎吾が僕の肩をポンっと叩く。
「よっ!じゃねぇーよ!おせーよ!!」
慎吾の方へ振り向きながら目を細めて文句を言う……
って!何で?!
僕は突然のことで驚く。
慎吾の隣に、何故か女の子が立っていた。
しかもその女の子は僕たちと同じ学校で、同じ学年、同じクラス。
名前は月乃美奈という。
顔なじみではあるのだが……話したことはほとんどと言っていいほどない。
そんな子がなぜここに……
「ごめんねー、待たせちゃったみたいだね。私が遅れたから……」
月乃さんは申し訳なさそうな顔をして僕に謝る。
「いや、そんなことは別にいいんだけど……何で月乃さんが慎吾と……」
「え?!あれ?慎吾くんから聞いてないの?」
慎吾の方を見て、顔で問いかける月乃さん。
…
……もしかしてこの二人……付き合ってるとか?
…
……
き、聞いてないぞ!何も!!
もしそうなら……慎吾のヤロー、いったいいつの間に……
慎吾が口を開くのを待つ。
「いや、実はさ、俺たち偶然、通ってる予備校が同じとこでさ。
で、その予備校が今日休みだから一緒に図書館行って勉強しない?ってことになったわけ」
ほーー、予備校が一緒でーー……
…
……
んな話し、そのまま信じるわけないだろ!!
…
……まあ、いいさ。……今はそういうことで。
後でじっくり追求してやろう……


図書館に着いた僕たちは同じ机に椅子を並べ、
教科書を開いて一緒に勉強している。
一人がつまづいてわからないところが出てくれば、
三人で肩を寄せ合い、一緒になって考え、教えあい、助け合う。
そんな光景が続く。
そんな光景が……
……まさか、月乃さんとこんな風に話しを交わすなんて…
今日の朝まで予想だにしなかったことに戸惑いを覚える。
月乃さんは僕らのクラス……いや、学校でアイドル的存在。
そのためいつも彼女の周りには人が群がる。
僕たち凡人にはそんな彼女と接する機会なんてほとんどなく。
例えクラスメイトでも僕らと違う世界にいるような……
小さな教室の中でそんな錯覚を感じていた。
…
……その月乃さんを慎吾は彼女にしたっていうのか……
もしほんとにそうなら……慎吾にはしかるべく制裁を与えなくては…
羨望というエネルギーを呪いというエネルギーに変換して…
いや、それでは物足りない。
増幅変換しなくては……
ふふ、ふふふふふ(  ̄ー ̄)ニヤリ
「どうしたの和也君?」
「……え?!い、いや何でもないよ。ははは」
いかんいかんまた顔に出てしまっていたようだ。
「そろそろ昼にするか?」
慎吾は言う。
「そうだね。……荷物はここに置いておいてもいいよね」
「うん、貴重品だけ持ってけば大丈夫でしょ」
二人で仲よさげに話している。
昼か……ここで慎吾に詳しい話しを聞きだしてやろう。
なぁ〜に、大丈夫さ、月乃さんがいる前では何もしないさ。
……月乃さんのいる前では……フフフ……
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