「そろそろ寝よっか、電気消していい?」
………その意味……どう捉えればいいんだ……
「ん?」
「あっ、いえ、僕が……」
とりあえず電気を消した。
「じゃ、じゃーあ、僕は向こうの部屋で……」
「いいじゃない、ここで寝れば。ね!」
部屋を出ようとしたら呼び止められた。
「じゃ、じゃーあ、僕はここで……」
「こっち来なよ!」
床で寝ようとしたら誘導するようにベットの上をパンパンと叩き、差し止められた。
………いいのか?……そっち行っても……
一瞬、いろんなことが頭を過ったが……ただ、過っただけだった。
もうここまで来たらどこで寝ようと大差はない。………ない…だろう……
「じゃあ」
僕は先生と同じフトンにもぐった。
………
ドクドクドクドク…
心臓の鼓動が聞こえる。
視線は真上に向けているが……隣が気になる…
僕はチラッと横を向く。
向こう側に寝がいりをうっている先生。
……か、髪の隙間から見えるつむじが……
ドクドクドクドクドクドクドクドク…
鼓動がさらに加速する。
い、いかん、心臓が破裂しそうだ!!
どうする?どうすれば……
後ろから抱きつく!
胸に手を回す!!
そして……
初めての……///
………
………だめだだめだだめだっ!!!
僕には互いに認め合った彼女がいるじゃないか!!!!
ハフゥー、ハフゥー、ハフゥーー…
心の中の深呼吸で気持ちを落ち着かせる。
おさまれー、鼓動よーー、おさまれーー…


ピュンピュンピュンピュン…
朝。
小鳥の鳴き声が聞こえる。
今日もある夏季補習。
鞄に教科書を入れているところだ。
……眠い。
結局あの後、ただの一睡も出来なかった。
……長い夜だった…
先生はついさっき帰ったところだ。
……どこか不機嫌そうにしていたのは気のせいか…
それにしても……
あー、僕はいったい何をやってるんだ。
一緒に寝たりなんかして……
だいたい美奈のことを先生に話すってのはどうなったんだよ!
ハァー、まずいよなーー。
朝になると妙に冷静になるのはなぜだろう。


ジリリリリリリリリ…
蝉、うるさい!
ああ、こう暑いと、頭がボーっとする。
下駄箱に靴をポイッと入れ、スリッパに履き替えた。
あ!美奈だ。
「おはよ!」
僕は何食わぬ顔で声を掛けた。
………嘘も必要だって言うしね。うん!
………言う……よな…
「………」
ん?返事がない。
「おはよっ!」
近づいてもう一度声を掛けた。
「………」
……返事がない。
「美奈?」
「………」
……返事が…
美奈はさっさとスリッパに履き替え、僕の横を表情変えず、するーっと通り過ぎて行った。
………へ?……何、これ?


教室。
「美奈?どうしたの?」
僕は美奈の席へ行き、もう一度声を掛けた。
「………」
……この距離で聞こえてないなど絶対にありえないのだが…
片手で頬杖をついて僕に対して反対方向を向く美奈。
……む、無視?
ど、どうして?!
まさか昨日のこと………
嫌な汗が出てきた。
………
………いや、ありえん!!
どう考えても昨日のことがばれるなどという経緯は見つからない。
……でもじゃあどうして?
「美奈?」
僕は美奈の肩を軽くポンッと叩いた。
「………っ」
何も言わずに頬杖をついたまま体をひねり僕の手を振り払う。
お、怒ってるー!間違いなく、何でかわからないけど怒ってるー!!
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